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オフィス物件の空室対策 入居率をアップさせるリノベーション

2019.02.21

オフィス物件の空室対策 入居率をアップさせるリノベーション

賃貸経営での空室の増加はオーナーにとって最も気になる不安要素のひとつです。入居者の退去後に次の入居者が決まらなければ賃貸による収入が減ってしまいます。最近では築10年以内の物件でも積極的な対策を行わないお部屋は、入居率が上がらないというケースもあるようです。空室対策として部屋の付加価値を高め競争力を向上させるリノベーションやリフォームは、多くの物件オーナーが実践している手法ですが、やり方を間違えると費用だけが掛かって入居率があがらない賃貸物件になる可能性がありますので注意が必要です。今回は資産価値を上げるための効果的なリノベーションを行うポイントについてご紹介したいと思います。

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リノベーションとリフォームの違い

一般的にリフォームとは老朽化した建物を新築に近い状態へ戻すことを指します。物件退去時に実施するいわゆる原状回復工事と考えることもできます。これに対してリノベーションは、大規模な改修を行い性能を向上させることを言います。老朽化したアパートやマンションやオフィスなどの、内装のデザイン性や設備の機能性を高めて、現代的なスタイルの間取りや意匠に変更することを指します。例えば断熱材を入れることで住み心地を良くすることは、リフォームではなくリノベーションです。

リノベーションの目的

建物は経年に伴い劣化していきます。立地や部屋の広さが同じ条件であれば、新しい物件に比べて古い物件は人気が低く、ビルオーナーにとっては賃貸借契約する際の条件が悪くなってしまう場合が一般的です。このまま放置する状態が続けば、新規契約時の条件が悪化するだけでなく、入居しても居心地が悪いためテナントが退去しやすくなる確率も高くなります。リノベーションを行い新しい建物に負けないように建物の性能を上げることで、テナントの入居期間を長くし空室率を下げることが可能です。これにより収入がなくなる期間を短くできれば、ビルオーナーにとって最大のメリットになるというわけです。

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空室の悩み

不動産投資における空室の発生は大きな痛手であり、空室期間が長ければ長いほど収支のバランスが悪くなっていきます。特に投資により発生しているローンを返済中の場合には早急な対策が必要になります。入居率を高めるためには付加価値を付ける方法とディスカウントする方法があります。家賃を下げる方法はお金がかからず手っ取り早いテクニックですが、一度価格競争に陥ると歯止めが利かなくなり、物件全体の収入が減少してしまいます。一時的には満室になるかもしれませんが、家賃の減額は建物経営において悪影響を及ぼしますので十分に注意をしてください。まずは一時金(敷金・礼金・更新料)免除やフリーレントを検討し、家賃の減額は最終手段と認識しておいたほうが良いでしょう。

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高い入居率を実現するためのリノベーション

次に周辺物件との差別化を図り付加価値を付けるためのリノベーションをご紹介します。

 

●共有部のリノベーション
エントランスやエレベーターホールは建物の顔になり、美観と意匠は入居者がチェックする大切なポイントです。エントランスからエレベーターホールへのデザインを大きく変えることで、老朽化したビルのイメージを一新し入居率を改善させます。一か所だけの改修で全体の入居率がアップする費用対効果の高いリノベーションと言えます。専有部と違い入居者が退去時でなくても工事が行うことができ、既存の入居者に向けたPRにもなります。資産価値を高めることになり、売却時に良い条件でビルを売却することができる要素の一つとなります。

 

●専有部のリノベーション
入居者が長い時間を過ごす専有部のデザインは重要です。社員のモチベーションアップのために環境を重視する経営者も多く、カスタマイズしやすいリノベーションオフィスの需要は増えてきています。白い壁に暗い色のタイルカーペットや蛍光色の照明ではモチベーションも上がりませんよね。従来の画一的なデザインではなく、クロスやフローリングに拘ったオシャレなカフェやアパレルショップのような雰囲気をもった空間にデザインすると良いでしょう。近年ではワンルームの住居のように落ち着ける部屋への入居を希望するケースが多く、2DKから1DKへのリノベーションの人気も高まっているようです。

 

●設備のリノベーション
目には見えにくいのですが、ライフラインとなる電気や水道といった設備のリノベーションも大変重要です。このような設備が使えなくなるのは、ビル経営には致命的です。建物設備は耐用年数が短く、築15年を過ぎると修繕や更新が必要となります。さらに年月を経ると部分的な修繕や更新では対処できず、配線や配管なども含めた全体のシステム更新が必要となります。新しい技術や新しい法規に基づく最新のシステム(方式)に変更しなければならないことも多くあります。最新のシステムを導入する場合は、建物の既存システムを熟知した上で新システムへ切り替えることが重要です。配線や配管ルートの検討および入居テナントとの調整など、複雑な技術的検討と調整能力が必要となるため、改修工事(リノベーション)の方が新築工事より高い技術力と経験が必要となります。

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リノベーションを上手くすすめるポイント

●計画的にリノベーションを行う
日ごろから建物の状況を把握し、共用部や設備改修との関連も考えて、次に空室になったらどのようなリノベーションやリフォームをするかを計画しておくことが重要です。空室が発生してから検討するのでは、空室期間が長くなる中で拙速な結論となり、無駄な投資に終わることも少なくありません。テナントが入っている状況ではできない工事(たとえば天井をはがして配管を取り替えるなど)は、空室となったタイミングで早めに対応できるように準備しておくと良いでしょう。

 

●リノベーションを得意とする施工会社を選ぶ
リノベーションを得意としている施工会社を選びましょう。会社によって得意不得意がありますので、オフィスビルの改修を専門にしている会社に相談するようにしましょう。入居者が退去する際は原状回復工事(リフォーム)が必要になってきますので、少ない支出で簡易的にリフォームが行えるような仕様や素材を施工業者と相談し決めると良いでしょう。物件により特性があり発生する課題も様々ですので、施工後のアフターフォローが手厚い会社がお勧めです。

 

リノベーションに関しては、普段お付き合いをしている不動産会社に依頼してしまうケースが多いかと思いますが、この方法はあまりお勧めしません。物件探しには強みを持ち、リフォーム(原状回復工事)も手掛けることが多い不動産会社ですが、物件の資産価値を高めるリノベーションについての知識や実績は一般的には豊富ではありません。大がかりな改修となるリノベーションは壊してみないとわからない部分が多く、リフォームとは違い「設計力」「対応力」「コミュニケーション力」「提案力」「サポート力」などが求められます。不動産会社は専門的な知見を持っていない可能性が高いため、リノベーションを専門とした会社に依頼するほうが良いでしょう。

 

●工期の確認
専有部をリノベーションする場合は、検討期間から入居者が決まるまでは空室扱いとなり収入がなくなります。なるべくすみやかに工事が着工できるようにしましょう。そのためには部屋の仕様を統一(標準化)しておくことが重要です。仕様を決めておけば、別の部屋が空いた際の工期を短縮できます。また募集のタイミングも早めることができます。共有部をリノベーションする場合は、入居テナントへの連絡が必要です。工期が決まったら、工事の内容をすみやかに伝えて情報共有をしておきましょう。

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おおまかな費用

何をどれぐらい改修するかによって施工の価格は大きく変わってきますが、オフィスビルのリノベーションは1㎡あたり10~20万程度が一般的です。50㎡であれば500万~1,000万円程度が目安になります。施工業者によって得手不得手がありますので、初めて行う場合は相見積をとるようにしましょう。予算によってできることが決まりますので、デザイン担当者にあらかじめ予算を伝えておいた方がスムーズです。リノベーションの内容によって、資金調達が必要になるケースもありますので注意してください。

 

●工事の費用対効果の検証
一般的に建物の賃料は築年数と共に減少していくと言われています。リノベーションを行うことで、賃料の低下を防止する効果があったか否かを検証することが重要です。投資だけで効果が見込めかった場合は、原因の検証が必要になってきます。分析した結果により今後の修繕計画も変わってきますので、入居者のニーズを把握しどの部分にコストをかけるべきか見極めましょう。

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百年建築のリノベーション

そこで皆様にお勧めしたいのが「百年建築のリノベーション」です。老朽化に伴い懸念される空室の増加や賃料の下落などに対して築古ビルに特化した知見(意匠、省エネ技術、健康対策)を統合しテナントにとって魅力的なビルへ改修します。リノベーションは新築建物に近づけることが目標と考えている方が多いのですが、「百年建築のリノベーション」は独自の美しさと機能性を追い求めることをコンセプトにしています。
やみくもにリノベーションを行うことなく、建物毎の状態を見極めながら空室状況と改修資金を加味して内容を検討し、使えるものはなるべく長く使う「もったいない精神」と設備システムのような目に見えない部分までを含めた改修を徹底して行う「やるときはやる精神」を大切にしています。「美装性」「機能性」「快適性」を向上させ老朽化による入居率の減少を防ぎますので、安心した賃貸経営を行うことができます。

 

●快適な空間
間取りが自由に行えるフリープランのレイアウトに改修します。フレキシブルで自由の利くワンルームは使い勝手が良くテナントに人気があります。スケルトンの天井は、配管をデザインとして生かしたインダストリアルな意匠で開放感があります。無駄なものをなるべく省き、テナントが自由に工夫して使える要素を残します。

 

●省エネデザイン
省エネ・節水仕様の設計を取り入れ、光熱費の低減を図ります。二重窓サッシ・遮熱カーテン・LED照明による省エネ対策と騒音対策により、テナントが快適にかつ経済的に活動を行うことができます。CO2の排出量を減らし地球温暖化対策にも貢献できるように配慮しています。

 

●健康オフィス
無垢材を使用した心地よいフローリングに加え、消臭機能や抗菌・抗ウイルス機能、さらにはVOC吸着除去機能のある漆喰塗装を利用した壁面デザインにより、可能な限り健康に配慮した安心安全な空間を提供します。シックハウスの専門家を設計グループに加え、その助言に基づきリノベーションを実施します。

 

●リモデルに価値を置くデザイン
木・石・鉄・漆喰といった自然素材を用いてデザインを行います。居心地の良さはもちろん、経年変化が目立ちにくく修繕しやすい素材を使っています。また容易に部分補修ができる材料や、安価に原状回復工事ができるような仕様と材料を採用しています。年が経つほど美しさを増す素材や汚れそのものが味を出すような素材(いわゆる『古る美る(ふるびる)』素材)を優先的に使います。補修が必要な場合でも部分補修やローコストで更新できるような仕様を選定しています。

 

●プロフェッショナルに依頼できる
百年建築』ではNPO(有識者)・建築家・エンジニア・建築施工・設備施工者・不動産会社が『百年建築グループ』を組んでリノベーションを実践しノウハウを蓄積し、各種ご相談に応じます。

 

●計画的なリノベーション
百年建築』ではリノベーションの方針や、仕様とコストなどを準備・標準化します。また『百年建築コミッティー』によるノウハウを活用し、工期の短縮に貢献します。共有部・専有部・設備は複雑に関係していますので、単独にリノベーションを実施すると、改修したばかりのところをすぐに取り壊さなければならないようなことがよく起こります。例えば専有部の内装をリノベーションした数年後に赤水問題が発生し、配管工事のため再び内装をやり直すというようなことです。『百年建築』では共有部・専有部・設備の関係性をよく調べた上で中長期の計画を立てます。実施時期と概算コストなどを元に『百年改修プログラム』を作成し、毎年のリノベーション計画と突然のトラブルやテナント退出時の準備をしておきます。

 

●費用と効果の検証
リノベーションの費用を20万円/㎡上限としてコストダウンを目指しています。これは新築の建設費を30万円/㎡(100万円/坪)(内訳:躯体1/3、内装1/3、設備1/3)と想定し、リノベーションを行う場合には躯体の建設費を省いた内装と設備の費用が発生すると仮定しています。リノベーション実施前後の家賃および収益比較を行い、計画とその実績を検証します。

 

百年建築のリノベーション費用の根拠

    内訳
躯体 内装 設備
新築 30万円/㎡ 10万円/㎡ 10万円/㎡ 10万円/㎡
リノベーション 20万円/㎡ 0万円/㎡ 10万円/㎡ 10万円/㎡

※百年建築のリノベーションは経年変化が目立ちにくく、かつ補修しやすい仕様にしています。安価に仕上げても維持費がかかるようでは本末転倒です。費用は20万円/㎡を上限の金額としてコストダウンを目指しています。

効果的なリノベーションで資産価値を高める

空室は不安材料ですが、リノベーションを行い資産価値を高めるチャンスです。そのためにも収支をしっかりと把握し、修繕計画を立てておくことが重要ですね。空室率を改善するための改修計画でお困りごとがあればお問い合わせください。