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中小ビルのエレベーター改修工事 その費用と実施方法
2019.03.29
エレベーターは適切な修繕を行い使用していても、経年劣化を完全に防ぐことはできず機能が低下します。一定期間が経過した後は、劣化した部材・設備をリニューアルすることが安全上必要です。エレベーターの改修には大きな費用発生しますが、人命にかかわる設備ですから大きな事故が発生してから取り替えるというわけにはいきません。安全を第一に考えなければいけないエレベーター改修工事のポイントについてお伝えしていきたいと思います。
エレベーターの耐用年数
国税庁の減価償却基準(法定償却耐用年数=税法上の耐用年数)では「17年」、現状に沿った耐用年数とされる計画耐用年数では概ね「20〜25年」です。きちんとメンテナンスを行っていれば実際には最長で20~25年ほど使えるということになります。ただし、計画耐用年数を超えたものを使い続けたり、定期的な補修を行っていない場合は、大きな事故につながる可能性が高くなりますので注意が必要です。
エレベーターリニューアルの必要性
エレベーターを安全に利用するために、定期的に点検を行い特定行政庁へ報告することが建築基準法により義務付けられています。また3か月に1回の現場点検や1か月に1回のリモート点検などにより、エレベーターメーカーが点検を行っているケースが一般的です。これらの点検をきちんと行っていても経年劣化により性能限界を迎え、リニューアルを行わなくてはならなくなります。建築基準法の改正により、エレベーターの安全基準も見直されますので、リニューアル後にはより安全性の高いエレベーターに刷新されます。
リニューアルのタイミング
どのようなタイミングでリニューアルが実施されることが多いのでしょうか。建物やエレベーターの状態によりさまざまなケースが発生しますが、主に以下のようなタイミングで改修されるケースが多いようです。
●長期修繕計画に従って実施
●部品の生産中止や保存終了に伴い前倒しで実施
●経年劣化によりトラブルが頻発したため実施
●省エネや安全性を高めるために実施
エレベーターの種類
エレベーターの種類は主にロープ式と油圧式があります。ロープ式はロープの一端をカゴに、もう一端をおもりに結び、巻上機を使用してエレベーターを駆動させます。油圧式は電動ポンプで油圧ジャッキを制御し、圧力でエレベーターを上下させます。制御盤や巻上機を設置する機械室がいらない「ロープ式エレベーター」の登場により油圧エレベーターの数は減少傾向です。ロープ式は油圧式に比べ、駆動音が静かで電気コストがかからず昇降スピードも速いため、新築やリニューアルの際にはロープ式が採用されるケースが増えています。油圧式には大きな力が出せて短い距離の移動に適しており、工場や駅のホームなどで使われています。
メンテナンスの種類
●メーカー系と独立系
エレベーターの保守点検にはメーカー系と独立系の2種類があります。メーカー系は製造メーカー系列(三菱エレベーター、日立ビルシステム、東芝エレベータなど)のメンテナンス会社で自社系列のエレベーターしかメンテナンスをしません。独立系はメンテナンスを専門にしている会社で、メーカー系よりも安い費用で対応をしてくれますので、ランニングコストを低くおさえることができます。ただし、独立系は自動復旧ができないケースが多く、地震などの大規模災害時の対応が遅れる可能性があります。全撤去リニューアルの場合は独立系からメーカー系に委託する形となるため、通常より2~3割高くなることがあります。
●フルメンテナンス契約とPOG契約
フルメンテナンス契約の場合はメンテナンス会社の判断で、消耗品を適宜更新します。POG(Parts、Oil、Greaseの頭文字を取っている)契約の場合は、ヒューズ・リード線・オイルなどの決められた消耗品は無償で交換してくれますが、定期点検範囲外の消耗品や部品の交換には費用が発生します。す。使用頻度の高いエレベーターの場合には、フルメンテナンス契約の方が総合的に見て安くなる可能性があります。また都度、見積をする必要がなく決済が合理的です。一度、フルメンテ契約からPOG契約にしてしまうと消耗品の保証の関係からフルメンテナンス契約に戻せないケースもありますので、注意してください。
改修工事の種類と費用
契約は締結した後に内容変更や契約解除することは一般的に難しいため、事前に契約内容や契約の条項を十分に吟味し、不明瞭な部分は事前に確認をして説明をしてもらいましょう。最近、悪質な業者によるサブリース契約のトラブルが社会問題にもなっており、注意喚起のために国土交通省と消費者庁が連携して注意点を公表していますので、こちらもあわせて参考にすると良いでしょう。不利な内容で契約をしないように注意してください。
改修工事には大きく分類して「①全撤去ニューアル」「②準撤去リニューアル」「③制御リニューアル」の3種類のプランがあります。制御盤や巻上機など限られた部分のみを改修する「③制御リニューアル」が最も安価ですが現行法に適合しないケースがあります。①全撤去リニューアルと②準撤去リニューアルには、現行法に適合させるために、主要の既設機器を取り換え、さらに耐震対策を行うなどコストはかかりますが安全性は高まります。既存のカゴ室も更新できるためエレベーター内部の意匠も新しく刷新することができます。建物の規模にもよりますが10階程度の建物でエレベーター1基あたりの費用は「①全撤去リニューアル」が一番高額になり、次に「②準撤去リニューアル」「③制御リニューアル」と安くなっていくのが一般的です。
プラン | 内容 | 価格 | 工期 | 築 |
---|---|---|---|---|
①全撤去リニューアル | すべて新しく入れ替える | 高額 | 約1か月 | 40〜50年 |
②準撤去リニューアル | 巻上機、制御版、ロープ、カゴ、扉などを交換 | 中間 | 1週間前後 | 20〜25年 |
③制御リニューアル | 傷んでいるところだけ部分的に改修 | 低額 | 1週間前後 | 20〜25年 |
※相場は1基あたり500~1,500万程度といわれています。
改修のメリットとデメリット
●メリット
エレベーターの乗り心地の改善や省エネルギー化によるランニングコストの低減が期待できます。快適性が向上し、安全面の不安が解消されます。「①全撤去リニューアル」や「②準撤去リニューアル」であればカゴ内部の意匠も刷新されますので、ビルの顔ともいえるエレベーターがきれいになりビルの資産価値が向上します。遠隔保守監視システムを導入すれば定期点検の回数も減りユーザビリティが改善されます。
●デメリット
リニューアルの工事期間は1週間程度のため、重い荷物の搬入出がないかなど、入居テナントの状況をリサーチして各テナントの不都合が最小限に抑えられるように調整する必要があります。特にエレベーターが1台しかない場合は計画的に行わなくてはなりません。一般的な企業の入っているビルであれば年末年始やお盆休みなど、長期のお休みを活用して工事を行うと良いでし
百年建築のエレベーター改修
今回、皆様にご紹介したいのが「百年建築のエレベーター改修」です。築30~50年以上の築古ビルを管理している経験を活かし、どのエレベーターのリニューアル工事をいつ行えばよいか、適格な判断することができます。また、百年先までの小規模から大規模までの修繕を見据え、改修計画を立てますので資金が必要になるタイミングを予測します。計画が事前にわかれば、ビルオーナーは早めに資金の準備をするなど安心した建物経営を行うことが可能です。
適切なエレベーター改修を行いましょう
エレベーターは毎日頻繁に使用する設備です。エントランスと同様にビル全体の印象に影響を与るエレベーターが、きちんとメンテナンスされていないと、既存入居者の安心度を下げ新しい入居者を遠ざけてしまいます。未来を見据えた資金計画と適切な改修工事のために、今回のコラムをお役立て頂ければ幸いです。