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築古ビルで起こりやすい火災報知器の誤作動対策
2020.04.05
平成30年度版の消防白書によれば、平成29年中の出火件数は年間39,373件発生していると報告されています。火災による死亡者のおよそ4~5割が逃げ遅れによるもので、火災発生時の初動が大切だと言えます。そのため不特定多数の人が利用するオフィスビル・商業施設・学校・病院などには、煙や熱などを感知して火事の発生をお知らせする自動火災報知設備の設置が義務付けられています。
火災報知器の設置はとても大切なのですが、設備が老朽化したり、適切ではない機器を設置したりすると誤報が多発してしまうことがあります。テナントビルの場合は、管理者が近くにおらず、警備会社も警報を止めにくるまで警報音が鳴りっぱなしで、入居テナントや周囲のビルに迷惑をかけてしまうこともあるので普段からのメンテナンスが大切です。
火災報知器とは?その種類と特徴も紹介
●火災報知器とは
火災報知器とは、避難と初期消火を行うために設置する消防設備(消火器・避難誘導灯・スプリンクラーなど)の一つです。天井に設置されており感知器が熱や煙を感知すると、受信機に信号が送られ、ビル全体の火災警報が発報することで火災の発生をビルにいる人に知らせます。「自動火災報知設備」「自火報」などと言われることもあります。ビルオーナーやビル管理会社が警備会社と契約している場合は、信号が警備会社へも連絡され、現場確認のため警備会社のスタッフが急行します。受信機を確認すれば広いビルでも火元がわかるため、避難や初期消火が可能になります。老人ホームや病院などでは自動火災報知器と連動して自動で119番通報されるしくみを整えているケースもあります。
●火災報知器(感知器)の種類
火災発生時には「熱」「煙」「炎」といった3つの要素が生じます。この3つの要素を感知する方式の違いにより「熱感知式」「煙感知式」「炎感知式」の3種類があり、室内の構造や用途によって使い分けをしています。設置に際しては消防設備士の資格を持つ方に相談して場所を決めるようにしましょう。
1.熱感知式
火災により熱が天井に蓄熱されることを利用し自動的に感知します。そのため主に天井面に取り付けられています。湯気や煙には反応しません。温度差を感知して動く「差動式」と、定まった温度になると感知する「定温式」があります。差動式のほうが感度は高いため、温度変化の少ないオフィスのような室内には差動式を設置するケースが多くなっています。火を使う厨房・調理室などは急激に高温度となるため、差動式では誤作動が起こりやすくなります。そのため定温式が良いと言われています。
2.煙感知式
火災により発生する煙が天井に畜煙されることを利用し自動的に感知します。主に天井面に取り付けられて、煙が一定以上の濃度を超えると火災信号を発します。炎が大きくなる前に察知することが可能なため、熱感知式よりも火災の早い段階で発報できると言われています。煙感知式は検出部が結露すると機能しなくなる可能性があるので、湿度の高い部屋では使用しないほうが良いでしょう。
3.炎感知式
火災により炎から紫外線や赤外線が放射されることを利用し、自動的に火災を感知します。紫外線または赤外線が一定の量以上になった場合、火災信号を発します。即応性が優れていますが、検知器と火元の間に障害物がある場合は感知することができません。また、消費電力が多いため電池では長時間の利用が難しいです。天井が高く火災の熱や煙が部屋の上部に蓄積されにくい劇場や映画館などで設置されるケースが多いようです。
火災報知器の誤作動の原因と対策
誤作動が頻繁に発生する場合には、機械が老朽化しているか、環境に適した感知器が設置されていない可能性があります。誤作動の発報を止めるためには火災報知器の制御盤をリセットする必要がありますので、制御盤の操作方法をまとめておくと良いでしょう。
誤作動が続くと入居者が発報に対して次第に無関心になり、本当の火事が発生した際に初期消火・通報・避難が遅れ、建物にいる人が命を落とすことにもなりかねませんのでメンテナンスは重要です。また、誤作動の発報が続くからという理由で火災報知器の電源を切ってしまうと消防法違反となり、火災が発生した際には罪に問われることがありますので注意が必要です。
●エアコンやストーブなどによる急激な温度変化
冬になるとエアコンやストーブなどで室内の温度を急激に上げることがあり、冷えた室内から急激に空気をあたためたことにより差温式熱感知器が誤作動します。エアコンやストーブと感知器の距離が近すぎる場合は設置場所を変えましょう。エアコンの風が直接感知器に当たるような場所は適していません。所轄消防の許可が必要になりますが定温式に交換するなども対応の一つです。
●雨水による雨漏りや老朽化した配管からの水漏れ
建物が老朽化すると防水機能が低下し雨水が建物内へ侵入したり、給水・排水設備が古くなることで配管から水が漏れたりすることがあります。この水が感知器内や配線の接続部に触れてしまうと感知器が誤って作動してしまう可能性があります。感知器の交換に加えてビルの漏水部の修繕が必要になります。
●感知器の結露
熱感知式は水を通す性質があるため、感知器内部に溜まった水が電気を通し作動してしまうことがあります。また接続部分がさびて作動してしまうことも考えられます。湿気は誤作動や故障の原因になりますので、湿度が高い場所や湯気や水滴がかかる場所には防湿型や防水型のものを選ぶと良いでしょう。
●感知器の老朽化
感知器は比較的シンプルな構造のため、あまり交換せずに使用しているビルが多くありますが、古すぎる機器は誤報を発生しやすくなりますので定期的な交換が必要です。10年以上経過したものは経年劣化が進んでいますので早めに交換したほうが良いでしょう。
●異物の侵入
特に煙感知器の場合は、殺虫剤のガスやゴキブリなど害虫駆除に使う燻煙剤の煙などが入ると煙と認識し発報します。煙とは異質のように思えますが、クモの巣や小さな虫、ホコリや粉塵などでも誤作動を起こしてしまうことがあります。掃除を行い汚れがたまらないようにすることと、殺虫剤や燻煙剤を使用する際は感知器をビニールなどで覆い隠すと良いでしょう。
築古ビルを適切に管理するための百年改修計画
老朽化したビルであれば、雨漏りや給排水管の水漏れや機械の老朽化などによる誤報が発生しやすくなるため、新しい建物に比べてより的確な管理が重要です。しかしトラブルが発生してからの場当たり的な管理では、ビル全体の改善にはつながらずお金ばかりがかかってしまいます。そこで皆様にご紹介したいのがセイコーステラの百年改修計画です。築30~築50年を経ている築古ビルを中心にメンテナスを行っているノウハウを生かし、築100年まで資産価値が落ちないようにビル管理をしていますので、ビル全体の状態を把握しながら自動火災報知設備の点検や管理を行っています。
火災報知器を正しくメンテナンスし健全なビル経営を
防災関係の設備は人命にかかわることですから、正しくメンテナスすることがとても大切です。きちんと整備をしておくことで誤作動が減り、誤作動により発生した対応にも時間がとられなくなりますし、何より入居テナントにも安心してご利用いただければ、長期にわたって借りてもらえる可能性が高くなります。今回のコラムを火災報知器の整備にお役立ていただければ幸いです。